地方創生の前に思うこと

私生活や地方自治に対して思うことなど

安いニッポン「価格」が示す停滞(日経BP)

本書の内容としては

①日本の安さについて諸外国のビックマック指数に近いものを例示しながら解説

労働生産性に触れながらなぜ日本が安くなったのか解説

③安さゆえに日本の土地や技術などが買われている事実提示

④最後に安いニッポンの未来を考える

といった構成になっている。


日本の中で育ち海外を見ないでに育ってきた私としては、海外との賃金格差や物価の違いをあまり気にせずに生きてきた。親世代と同じような考えで、日本がまだ経済大国だと漫然と妄信していたため、新鮮な内容であった。


まずは日本の物価について、メーカーの出荷価格の引き上げは何回か行われているが、日経POSデータベースではこの20年間日本の物価はほとんど変わっていないというデータや、その反面でアメリカでは物価が毎年2パーセントずつ上昇してきたことがあげられており、日本はこの30年間賃金が全く成長していないこともあり相対的にどんどん安くなってしまったことが示されていた。

 

次に、日本の労働生産性について。生産性とは商品価格によって変化するものであり、同じ時間をかけても生産した商品価格が安ければ生産性は低くなることもあげられていた。
確かに仕事をしている中で生産性を求められても、生産性の高い国の人間が我々の二倍速で仕事をしているようには思えなかったので、何かしらのカラクリがあるのだろうと思いつつも特段調べることはしていなかったため、生産した商品価格が安ければ生産性も下がるのだと納得できた。

日本の労働環境についても触れており、日本の初任給もウイリス・タワーズワトソンの調査では14ヶ国中下から4番目(スイス、アメリカ、ドイツ、ノルウェー、フランス、スウェーデン、イギリス、アラブ首長国連邦、韓国、シンガポール、日本、台湾、中国、タイの順)であり、平均賃金もG7の中では最下位となっていることや「日本は給与よりもやりがいを重要視する文化だ」という主張もあるが国土交通省の調査では仕事に対しての「賃金・給与」「労働時間」「仕事のやりがい」も余暇の「居住スペース」「住まいの周辺環境」「レジャー・余暇」に関してもドイツ、イギリス、フランス、日本の中では最下位となっていることも示されていた。

 

そして、外資マネーの流入によってニセコが買われ、技術がある企業が買われ、お家芸であるアニメの人材も買われていること。

 

また、安いニッポンの未来の一つとして、水産物の世界の消費量が急増する中で買い負けが起こり、刺身の価格が高騰し手が出せなくなることなどが挙げられていた。

帰結の部分では、コロンビア大学教授の伊藤隆敏氏の「日本の『安さ』は、いずれ日本に返ってくる」というのが印象的であった。

 

職場の先輩からは「最近の若者は何に金を使っているんだ?」と質問されることもあったが、娯楽に使う金はもとから無かったのだと思われる。

職場はほぼ年功序列なので、なんでこの人が自分より高い給与をもらっているのだろうと感じる時も多々あるが、そういった給与体系も見直されるべき時期に来ているのかもしれないと気づかされる一冊であった。